【音楽の部屋|リュリ】フランスオペラ界で頂点をつかんだ作曲家

その名はリュリ。芸術の交差点フィレンツェはルネサンスからバロックへの移りゆくころの1632年に、この大地で生を受けた。しかし、彼の物語はここイタリアではなく、遥かフランスで奏でられることになる。

粉挽き職人の息子であったリュリには庶民の血が彼の心を駆り立ている。しかし音楽という才能の魔法によってフランス王宮への扉を開くことになる。そして若き日のリュリには、夜空に光り輝く数々の星が彼に競い合うかのように寄り添い、音楽の才能を開花させていった。

運命を託したオールを一心不乱にリュリは漕ぎ続け、その道で新たな才能を開花させる。その輝きに満ちた彼の姿は、庶民の心を持ち合わせる気質も相まって存在感を大きくさせていた。そして運命の時が訪れる。ルイ14世の目に触れた。王の心を動かしたその才能は、その後の宮廷音楽の頂点へと導かれていく。

リュリの手の中にある音楽は、まるで魔法のように宮廷を彩り、王の心を打ち抜く。そしてオペラやバレエといった舞台をはじめ、室内、宗教音楽といったあらゆるシーンでリュリは欠かせない存在となった。その音楽はフランス貴族たちをも魅了し、17世紀フランス音楽の歴史の1ページを刻む。

そして1672年、王立音楽アカデミー(オペラ座)の開設権を得て劇作家フィリップ・キノーとタッグを組み数多くのオペラを発表する。これにより事実上フランス・オペラの創始者と後世に伝わっている。粉挽き職人の息子がつかんだフランスオペラ界の頂点は、まさにリュリ自身の交響曲となっていた。